運命じゃないひと
- violeet42
- 2016年11月15日
- 読了時間: 2分
希ちゃんがふいに絵里ちゃんの名前を呼んだ。
「なあに?」 「ちが、……ごめんなさ…っ、」
よりによってセックスの時に呼ばなくてもよかったのに。ああ、セックスだから呼んだんだよね。
「もっと呼んでくれる?」 「ことり、ちゃ……っ…」
赤いリボンで目隠した希ちゃんの髪の毛を強く引っ張る。四つん這いになって背中を反らす希ちゃんは、まるで犬みたい。
「えり、って呼んでね」 「あ……んっ………ぇ、り……」 「ちゃんと呼んで」
今度は枕に頭を押さえつけてお尻を高く上げさせる。すっかりとろとろに溶けた入り口に、一気に3本指を入れる。
「あっ……はぁっ……えり…っ…」 「のぞみ、」
できるだけ低い声で名前を呼んであげたらきゅっと指をしめつけてきた。どうしようもないひと。かわいそうなひと。何度も何度も名前を呼び合う。
きっとあの人の指はもっとしなやか。そして触れる手つきは繊細でやさしくて、こんなに乱暴じゃないんだろうね。
「あっ…ぁ……んっ…………り、」
希ちゃんが小さく名前を呼んで静かに果てた。
「はぁ……っ……はぁ………」
目を覆っていた赤いリボンを解けば、そのまま希ちゃんが表情を隠すように枕に顔をうずめる。ふたつに結われていない髪の毛は、真っ直ぐでさらりと肩をすべる。あの子みたいに艶やかな黒髪を一房とって、今まででいちばんやさしい仕草でそっと口づけた。
「のぞみちゃん、こっち向いて」
泣いてるのかなと思ったら、そうじゃなかった。潤んだ瞳は宝石みたいなエメラルド。ちがう。あの子とちがう。だけどいいの。欠けたピースは違うもので補えばいい。
「にせもの同士、仲良くしようね」
手にした赤いリボンをお互いの小指に結びつけた。ことりちゃんは、うちが見つめると傷ついた顔をする。琥珀の眼差しを向けることはできなくてごめんなさい。
「のぞみちゃん、」
甘く呼ばれてまとわりつく。
「だいすきだよ」
乱雑に結ばれた赤いリボンはきっとすぐに解けてしまう。うちも大好き。うちは、うちだけが、
(ことり)
果てるとき、名前を呼んでいるのを、あなたは知らない。
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