ホウレンソウはしっかりね
社会人パロ 新社会人として働き始めてもう3ヶ月。だんだんと仕事には慣れてきてけれど毎朝憂鬱な気分で目が覚める。朝食を食べて歯を磨いて化粧をして着替えたところでようやく気持ちが仕事モードに切り替わるけれど玄関のドアがいつも心なしか重い。ああ今日も一日頑張らないと。...
あなたの望みをおしえてほしい
μ'sが存在しない世界線の話。生徒会長じゃない絢瀬絵里。 「廃校になるって噂されてた音乃木坂、新入生増やすためにスクールアイドルはじめた子たちがいるんやって」 「ふうん」 「なんか青春って感じやね」 青春、そんな言葉でこの退屈な3年間を括らないでほしい。こんな檻のような...
痛みだけが真実でした
人妻の希と大学生の絵里の不倫話 ※ふたなり注意 「希さん……?」 バイトが長引いて疲れた体を引きずりながらアパートに辿り着けば、希さんが私の部屋のドアの前でうずくまっていた。ドアの横にひっそりと設置されている切れかけの外灯がちかちかと頼りなさげに希さんを照らして、駆け寄って...
世界を閉じ込めた夜に
※ふたなり注意 「はじめまして、絢瀬さん」 にっこり笑って差し出された手を、私は握り返すことができなかった。この穢れを知らない綺麗な手に触れてはいけない。触れてしまえばきっと、 希に初めて出会った時、希という存在を認識した瞬間から私の世界がめまぐるしく動き出した。それなのに...
午前4時の深海
夢を見た。そう遠くはない昔の夢。まだ親友だった頃の夢。誰にでも優しくて、誰にも優しくなかったあの頃。大事なものも、そうじゃないものも、全部まとめて抱きしめていたあの子。平等でありすぎてしまえば、それはもう全部ただのガラクタなのに。 特別を無視しないで。 ...
かみさま私たちはあなたのことを畏れません
「やめて。神様に怒られるわ」 放課後、ふたりきりの部室。好きって言ってぎゅっと抱きしめたら、真姫ちゃんが凛の腕の中でよくわからないことを言った。 「かみさま?」 「そうよ。世界はアダムとイヴで成り立っているの」 「あだむといぶ?」...
後ろの正面、嘘だらけ
かごめかごめ 籠の中の鳥は いついつ出やる夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 、 うずくまって目隠ししたわたしの周りを子供たちがぐるぐる周る。笑い声、ささやき、足音、単調な歌が終わって沈黙。いつも一人だけわかった。あなただけはわかる。背後にいるのはわたしの、 「穂乃果ちゃん」...
時よ止まれ 君は美しい
重いまぶたを持ち上げればすっかり日が傾いていた。ソファに横たえていたからだをゆっくり起こして座り直す。目の前で沈黙を守るテレビをぼんやり眺めながらあくびをひとつ。 知らない部屋。知らないテーブル。知らないソファ。知らない匂いがする。きのうも知らない女の子にとても親切にし...
Night in-cider
考えていることがある。 ぼんやりと、うっかり、あらがえずに、意識して、状況は様々だけど、考えていることがある。私はこの気持ちにべつの名前をつけたい。本当はすでにわかりきっていることだけど、途方にくれていた。わかっていることが、自分自身の中で腑に落ちない。恋に落ちる、なん...
バックボーンは饒舌に語る
うみちゃんの背骨はなにでできてる? 背筋をぴんとのばしてうみちゃんが的を見据える。それを道場の入り口から眺めていた。きりりと構えて、射る。それは放つというよりも、円のかぎりなく中心に迷いなく吸いこまれていくみたいだった。そして張りつめた空気がゆっくりと溶けて穏やかになる。そ...